地域で暮らしたい障害者のための「グループホーム」を利用してみませんか?

「心の病や精神障害があるけれど、自分らしく自立した生活を送りたい」
「施設の入所や精神科への入院ではなく住み慣れた地域で暮らしていきたい」
そうした願いが叶う場所として、「障害者グループホーム」というものがあります。

障害者グループホームとは、簡単に説明すると、心の病や障害のある方が「それぞれに必要な支援を受けながら」「地域で共同生活を送ることができる」住居のことです。

「それってどういうことなの?」
「もっと詳しく知りたい」

そんな疑問が湧いた方もいらっしゃるかもしれませんね。
この記事では、障害者グループホームで受けられるサービスやメリット・デメリットなどについて詳しくご紹介いたします。

ぜひ最後までご覧になって、疑問や不安の解消にお役立てください。

障害者として生きる苦しみ

まずは、縁あってこの記事の執筆に携わることになった私の体験をお話させてくださいね。
私は精神障害福祉保健手帳2級の障害者です。
病気を発症したのは、18の頃。
統合失調症でした。
当時は、母や父から毎日「まさか娘が障害者になるなんて…」「私が育て方を間違えたのかしら…」と言われ、本当に苦しい思いをしたことを覚えています。

身体の病気や怪我と違って、精神病の症状やそれに伴う葛藤は目に見えることがありません。
だからこそ精神障害についての理解を得るのは難しいのだろうなと、40歳になった今なら理解することができます。

ただ「家族ですらこの苦しみを理解してはくれないのだ」という現実は何よりも辛く、18になったばかりの私は次第に部屋へ引きこもるようになっていったのでした。

家庭にも地域にも馴染めない孤独な日々

20歳を過ぎても私の病状が良くなることはなく、家族からも敬遠され、地域の人々からは白い目で見られることもありました。

「統合失調症を発症するまでは、こんなことはなかったのに」
「私は生きていては駄目な存在なの?」

そう考えてみても、答えは見つかりません。家庭にも住み慣れたはずの地域にも馴染めない、孤独な日々が続きました。

私の後悔

統合失調症の治療のため、精神科への通院は何年も続き、やがて友人もでき始めました。
辛いことがあったとき、思わず涙をこぼすとき、友人たちの存在がどれだけ私の心を慰めてくれたことか。

友人たちには感謝してもしきれません。

しかし、一つだけとても後悔していることがあります。

それは突然のことでした。
ある時、一人の友人がこう言ったのです。

「もう、入院した方がいいって、私。」

まさか、と思いました。
彼女は入院が必要なほど症状が酷そうには見えなかったからです。

「まだ決まったわけじゃないけどね」

そう言って彼女は笑っていましたが、その後再び会うことはありませんでした。
入院以外の選択肢があると伝えたかったのに…。

障害者グループホームという選択肢

精神障害を抱えて自立した生活を目指すことは難しい、そう考える人もいるでしょう。
私の友人のようにさまざまな事情から入院を迫られたり、「入院するしかない」と思い込んでいたりする方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、本来はそういった方たちにも障害者グループホームという選択肢があるはずなのです。

友人が入院の話をしたとき、私はすでに障害者グループホームの存在を知っていました。

でも、私は彼女に伝えることができなかった。
あの時の後悔を繰り返したくはありません。
住み慣れた地域で安心して暮らしていける。

障害者であっても自立の道を模索できる。

障害者グループホーム 市川市

それこそが障害者グループホームなのだと、多くの方に知っていただきたいと思います。
障害者グループホームとは、障害者総合支援法によって定められた「障害者福祉サービス」の一つです。

心の病や障害のある方が「それぞれに必要な支援を受けながら」「地域で共同生活を送ることができる」住居のことを障害者グループホームと呼び、「共同生活援助」と言われることもあります。

障害者グループホームへ入居すると、食事や服薬管理、相談への対応といった支援を受けながら、それぞれが自立を目指して生活を送ることになります。

障害者総合支援法

障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付、地域生活支援やその他の支援を総合的に行います。これによって、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的にしています。

引用:国立障害者リハビリテーションセンター|障害者総合支援法

障害者グループホームの目的

障害者グループホームでは、入居者が安心して自立した生活を目指せるよう、必要なサービスを適切な形で支援する目的があります。
障害をお持ちの方のなかには、親元を離れ自立した生活を送りたいと考える方も多いことでしょう。
私自身もそうでしたし、精神科病院へ通院する中で知り合った友人たちのなかにも同じように考えている人は多くいました。

とは言え、障害の特性上、一人で生活することに不安を感じて踏み切れない場合もあります。

そんな時に頼りになるのが、障害者グループホームなのです。

障害者グループホームで受けられるサービス

障害をお持ちの方が日常生活を送る中で、どうしても支援が必要になる場面があります。
そうした場面できちんと適切な支援をし、障害を持つ方の支えとなってくれるのが障害者グループホームです。

グループホームの入居者には個別の支援計画を作成した上で、それぞれが必要としている支援が提供されることになります。

以下に挙げるのは実際の支援の一例です。

障害者グループホームの支援例
金銭管理
服薬管理
見守り
相談対応
通院同行
就労支援
食事の提供など

これらはあくまでも一例であり、障害者グループホームによって運営体制や提供される支援内容が異なる場合もあります。

入居を検討する際には事前の確認を忘れずに行ってくださいね。

障害者グループホームでの暮らし

障害者グループホームでは、2~20人の少人数で「共同生活」することを基本としています。
しかし、「共同生活」と聞くと「プライベートな空間がないのかな?」と心配になる方もいらっしゃるかもしれません。

確かに障害者グループホームによっては入居者が集まって大部屋を使うということもありますが、プライベートが守れる個室に入居できるところもどんどん増えてきています。
特に、これまで大部屋のみだったグループホームでも、建て替えを機に全室個室にするところはとても多いのです。

他者との交流で緊張したり疲れたりしやすいという方は、個室のグループホームを選べば安心ですね。
また、障害者グループホームに入居すると、日中に就労やデイケアといった活動に取り組む必要があります。これら日中の活動は、障害を持つ人それぞれが自立した生活を目指す上で大切な一歩となっていくことでしょう。

障害者グループホームの種類

障害者グループホームにはじつは2つの種類があります。
一つは、一人暮らしなどの自立した生活に短期間で移行することを目的とした通過型。
もう一つは、期限を定めることなく長期に渡って利用することのできる滞在型です。

通過型

通過型の障害者グループホームでは、およそ3年間という期限のなかで一人暮らしなど自立した生活への移行を目指します。
基本的には利用期間の延長などには対応していないため、ご自身の目的にあった利用ができるか入居前に確認するようにしましょう。

滞在型

滞在型の障害者グループホームでは利用期限はなく、じっくりと自分のペースで自立した生活を目指すことができます。
また、滞在型障害者グループホームなら永続的な利用も可能です。

障害者グループホームに入居するメリット

もっとも身近な存在である家族のもとを離れ、支援を受けながら生活することに不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、時には家族のもとで生活する安心感が、自分らしく自立した生活を難しくしてしまうこともあります。
では、反対に障害者グループホームに入居することのメリットとは何でしょうか。

じつは、入居することによるメリットは3つあります。

専門のスタッフから支援を受けられる

障害者グループホームに入居する一番のメリットは、専門のスタッフから必要な支援を受けられるということです。
心の病や障害を持った方が自立し、一人暮らしをしていくためには、苦手なことも自分でこなさなければなりません。
金銭管理や健康管理、炊事洗濯など、最初からうまくできるか自信がない方もいらっしゃることでしょう。

しかし、心配する必要はまったくありません。

障害者グループホームでは入居者にとって最適な支援を行う体制が整っているため、スタッフのサポートを受けながら安心して自立への道を歩めるからです。
自立した生活や一人暮らしへの不安がある方にとって、これほどのメリットはないでしょう。

自立した生活を目指せる

「心の病や障害があっても自分らしく自立した生活を目指せる」というのは、障害者グループホームに入居するメリットであり、またグループホームが目的としていることでもあります。

障害者グループホームでは入居者ごとに作られる支援計画をもとに、「できることは自分で」「できないことはグループホームのスタッフに支援してもらいながら」だんだんと自分でできることを増やしていけます。

自分でできることが増えていけば、それはやがて自立への大きな自信となり、自分らしく生きる道へと繋がっていくことでしょう。

さまざまな人とコミュニケーションができる

さまざまな人とコミュニケーションができるのは、障害者グループホームのメリットの一つです。
グループホームでは、スタッフや他の入居者と会話する機会が自然と増えます。
そのため、家族のもとを離れて不安を感じる時でも寂しい思いをせずに済みます。
また、心の病や障害をお持ちの方のなかには、他者との距離感に悩む方やコミュニケーションをとるのが苦手だという方もいらっしゃるでしょう。
そういった方でもあまり心配することはありません。

グループホームで共同生活を送る中で、少しずつ克服していけることもあるからです。
とは言え、入居後に「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないためにも、事前の見学や体験入居を通して他の入居者やスタッフとの相性を確かめることも忘れないでくださいね。

障害者グループホームのデメリット

障害者グループホームに入居するメリットがある一方で、デメリットとなることも存在します。
なぜなら、障害者グループホーム自体がまだまだ発展途上にあり、入居を希望する人たち全てにサービスを提供できないこともあるからです。
ここからは障害者グループホームのデメリットについてお話することにしましょう。

入居を希望しても入居できないことがある

心の病や障害を持つ方が障害者グループホームへの入居を希望しても、場合によっては入居できないこともあります。
これは、利用を考えている障害者にとって大きなデメリットです。
障害者グループホームの歴史はまだ浅く、充分な数のグループホームがあるとは言えません。
そのため施設に空きが出ず入居ができなかったり、空きが出るまで入居を待ち続けなければならなかったりする場合もあります。

また、スタッフからの支援を多く必要とする方や介護・看護が必要な方など、障害の程度によって入居が断られてしまうケースも少なくありません。
ただ「必要とする支援がどこまでであれば入居が可能なのか」というラインは具体的に決められておらず、グループホームの判断次第とも言えます。
入居ができるか不安な方は、まずは利用したいグループホームに、もしくは自治体や相談支援事業所に入居の相談をしてみてくださいね。

性格・障害などの特性によっては環境に馴染めないこともある

障害者グループホームの利用を検討されている方の中には、障害の特性や性格によって「他者との交流が苦手だ」という方も多くいらっしゃいます。
また、家族と離れるのを不安に感じる方も少なくありません。
そういった方は、場合によっては「共同生活」という環境に馴染めないことがあります。

環境に馴染めないことはその方にとって大きなストレスとなりますし、心の病や障害の回復に悪影響を及ぼさないとも限りません。
実際には入居してみなければ分からない面もありますが、「今までと違う環境がかえってストレスにならないか」という点については事前にしっかり考えることをお勧めします。

障害者グループホームに入居する際の注意点

障害者グループホームへの入居を考え始めたときに注意していただきたいのは、「利用したいグループホームを必ず見学する」ということです。

グループホームを見学することで、

・グループホームのスタッフや他の入居者とうまくやっていけそうか
・話しやすい雰囲気はあるか
・住み心地は良さそうか
といった不安感を事前に取り除けます。
また、可能であれば体験入居もしておきたいところ。
グループホームのスタッフや他の入居者との相性は、見学だけではなかなか判断しにくいものだからです。

障害者グループホームは長く住むことになる場所ですから、細かくじっくり検討して、納得できた状態で入居の手続きに踏み切りましょう。

障害者グループホームの利用条件

障害者グループホームに入居する最終的な目的は障害者自身の「自立」です。
そのため、障害者グループホームのスタッフから支援を受ければ問題なくその地域で生活できることが利用の条件になります。
また、障害者グループホームへの入居申請には障害者手帳と、紹介福祉サービス受給者証が必要になります。

お持ちでない方は、市区町村の障害者福祉主管課、もしくは保健所・保健センターなどの担当窓口で申請が可能です。

※障害者手帳が交付されるまでには、最短でも1か月程度、長ければ3~4か月かかることもあります。

障害者グループホームの利用条件

■介護や看護を必要としないこと
■障害者グループホームのスタッフから支援を受ければ問題なくその地域で生活できること
■障害者手帳を所持していること
■紹介福祉サービス受給者証を提示できること

「障害者グループホームの利用条件に当てはまるか分からない」
「利用に関する相談をしたい」

という方は、ご希望のグループホームに直接ご相談されるか、またはお住いの市区町村の役所内「障害福祉担当窓口」などでご相談ください。

生活保護でも障害者グループホームを利用できる

受給中の方に限らず、経済的な理由で今後生活保護の申請を検討している方もご安心ください。
生活保護でも障害者グループホームを利用することは可能です。

■生活保護とは…

生活に困窮している方に「健康的で文化的な最低限度の生活」を保障し、自立した生活を送るための助けとなることを目的として作られた制度のこと。
持てる資産・能力をすべて活用してもなお生活が立ち行かない場合、決められた基準のもと、困窮の程度に応じて保護費が支払われる。
生活保護受給中、グループホームの家賃は家賃扶助の基準額内であれば全額保護費でまかなわれます。
この基準額はグループホームの所在地ごとに異なります。

また、生活保護の家賃扶助とは別に、国の家賃補助制度を利用することも可能です。
こちらは月額上限が1万円となっており、生活保護の家賃扶助とあわせて利用が可能なため、入居者の負担は大きくありません。

まずはお住いの市区町村にある生活保護担当窓口で、「障害者グループホームの利用について教えて欲しい」とご相談ください。
担当者から詳しい申請方法について聞くことができます。

障害者グループホームで自立への道を踏み出しましょう

さまざまな事情で家族のもとを離れて一人暮らしを検討している方や、入院を考えている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、障害をお持ちの方が自立した生活を営んでいくことは、時に困難な場合もあります。

「心の病や障害があり、すぐに一人暮らしをするのは不安」
「施設への入所や精神科への入院ではなく、住み慣れた地域でゆっくり自立を目指したい」

そんな方は、この記事を参考に「障害者グループホーム」の利用をぜひ検討してみてください。

障害者グループホームなら、あなたが必要とする支援を適切な形で受けながら、自立した生活を目指すことができます。
まずは一歩、勇気をもって踏み出してみましょう。
明るい未来が、きっとあなたを待っているはずです。

出典:e-ヘルスネット グループホーム(グループホーム)

厚生労働省 生活保護制度

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