障害をお持ちの方にとって貧困と自立は密接につながっており、時に大きな壁として立ちはだかることがあります。
「障害者の4人に1人が貧困である」とも言われる中、改めて障害者の貧困と自立に関して考える必要性があるのではないでしょうか。
日本における障害者の貧困率
障害をお持ちの方の生活は、必ずしも豊かであるとは言えません。
それどころか、家族の収入や介護に頼って生活している方や、就職しても思うような収入が得られないという方がとても多いのが現実です。
きょうされん(旧称:共同作業所全国連絡会)の調べによると、障害のある方のじつに56.1%が年収100万円以下なのだということが判明しました。
参考:障害保険福祉研究情報システム|日本の障害の重い人の現実
これは驚くべき事実であり、まさに障害者の貧困の実情を表わしていると言えるでしょう。
国、または地域の所得水準に対して貧しい状態のことを相対的貧困、またその基準となる年間所得を貧困線と呼びますが、厚生労働省によると2018年の貧困線は127万円でした。
参考:厚生労働省2019年国民生活基礎調査
つまり、障害をお持ちの方の2人に1人は相対的貧困以下の収入しかないということになります。
じつに胸の痛くなる話です。
障害者の生活保護受給率の高さ
障害をお持ちの方の2人に1人が相対的貧困以下の収入しかないということは、生活保護の受給率も高いのでしょうか。
令和3年11月の厚生労働省被保護者調査によると、日本全国の生活保護受給率は1.63%となっています。
その一方で、障害・傷病をお持ちの方の生活保護受給率はなんと24.8%と、非常に高いことが判明したのです。
さらに、2021年3月3日の北圀新聞によると、障害年金受給者の生活保護受給率は一般の生活保護世帯に比べ、じつに4.6倍にも上るとのことでした。
「心身の障害によって生活保護を利用する方が多い」という現実があらわになっている調査結果だと言えるでしょう。
親元を離れられない障害者の貧困問題
障害のある方が親元を離れて生活しようと考えると、どうしても貧困に苦しんだり、あるいは生活保護を利用せざるを得なかったりする場合もあります。
しかし、誰かに頼ることを「恥ずかしい」と感じやすい日本人の性格が影響してなのか、生活保護を利用することに強い抵抗を覚える方も少なくありません。
こうした理由から、障害をお持ちの方の中には「やはり親元から離れられない」と考える方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
障害者の6割が親との同居を選択
障害のない方の多くが若いうちに一人暮らしを始めるのに対し、障害をお持ちの方は一人暮らしを望んでもなかなか思うようにいかず、親との同居を選択せざるを得ない方も多くいます。
きょうされん(旧称:共同作業所全国連絡会)の調べによると、10~40代前半までの障害のある方のうち、じつに約6割が親との同居を選択し、生活を送っているとのこと。
この背景には、障害をお持ちの方が親元を離れるのに十分な収入を得ることができないという事情があると考えられます。
結婚している障害者は4.3%しかいない
障害をお持ちの方の中には、結婚することなく親元に留まる方も多くいます。
たしかに、障害の影響で親元を離れ自立した生活を営めない場合、結婚し新たな世帯を持つことは困難なことかもしれません。
きょうされん(旧称:共同作業所全国連絡会)の調べでは、障害をお持ちの方に結婚しているかたずねたところ、「結婚している」と答えた方はわずか4.3%でした。
さらに、内閣府発行の「平成25年度 障害者白書」では、障害をお持ちの方の未婚率(結婚していない方の割合)は以下のような結果となっています。
配偶者有 | 配偶者無 | 不詳(分からない・回答無しなど) | |
身体障害者 | 60.2% | 35.4% | 4.4% |
知的障害者 | 2.3% | 96.7% | 1.0% |
精神障害者 | 34.6% | 63.9% | 1.5% |
平成25年度 障害者白書を参考に独自に作成
以上のことから、障害をお持ちの方が親元を離れて自立した生活を営む機会は、残念ながらあまり多くはないと考えられます。
障害者の就職と現実
障害をお持ちの方にとって、就職は悩みの種の一つです。
現在日本では、障害のある方も住み慣れた地域で自立した生活が送れるよう、また障害のある方でも適性に応じた就職ができるよう、「障害者雇用促進法」が制定されています。
■障害者雇用促進法とは…
事業主が障害者を一定の割合で雇用するよう義務として定め、障害者の安定した就労を目指すことを目的とした法律です。差別を禁止し、障害者への合理的配慮などを提供するよう義務付けられています。
障害者雇用促進法によって、障害をお持ちの方が企業に雇用されることも増えてきましたが、一方で問題はまだまだ山積みなのが現実です。
障害者の安定した就労を目指すために解消すべき3つの課題
障害をお持ちの方が安定して就労するためには、3つの大きな課題があります。
障害者就労の課題
■低賃金
■短期での離職率の高さ
■他の従業員から理解を得にくい
これらの課題の中でも、特に賃金の低さは問題です。
障害をお持ちの方が就職しても、貧困から抜け出せないことが多々あるからです。
これらの課題が解決して初めて障害をお持ちの方が貧困から脱却でき、生き生きと自立した生活を営めるのだと言っても過言ではないでしょう。
障害者の離職率の高さについて
就職が決まった後の離職率の高さは、今後取り組んでいくべき大きな課題です。
2017年に厚生労働省が発表した「障害者雇用の現状」では、障害をお持ちの方の50%以上がフルタイムでの勤務を希望していることが分かっています。
これは、就職を希望する障害者の多くが就労に意欲的であることの表れだと考えられます。
しかしその一方で、職場への定着率は決して高いとは言えません。
障害者の1年後の職場定着率は、なんと62.4%と大変低くなっています。(身体・知的・精神・発達の定着率から独自に平均を算出)
これは、障害をお持ちの方のうち約4割が1年以内に離職してしまう計算です。
障害者の貧困を解消し、全ての人が自分らしく自立した生活を営むためにも、今後は離職率の改善に向けたサポートや法整備が重要になってくるでしょう。
障害者として自立したい・できないという葛藤
ここまでお話してきた通り、親元から離れ自立したいと考える障害者の方にとって、貧困は大きな問題です。
この記事を執筆している私自身もじつは統合失調症を患っており、長い間貧困に苦しんできました。
そして、障害によって貧困生活を送っていることや地域社会から孤立しがちであることは、私が住み慣れた地域で自立の道を歩みたいと考え始めた時に、大きな壁となって立ちはだかってきたのです。
そんな時に私が知ったのが「障害者グループホーム」。
障害者グループホームとは、心の病や障害のある方が「必要な支援を受けながら」「地域で共同生活を送ることができる」住居のことです。
就労の有無は問われず、一定の利用条件を満たしていれば障害者グループホームで自立への第一歩を踏み出すことができます。
また、生活保護を受給中の方やこれから申請を考えている方も利用は可能です。
詳しくはこちらの記事を参考にしてみてくださいね。