障害者グループホームで活躍するサービス管理責任者について

読者の皆様は、障がいを持った方が地域で自立して過ごすための「グループホーム」という施設のことをご存知ですか?

グループホームは、「サービス管理責任者」という職種の人を中心に運営されている施設です。

実はサービス管理責任者は、障害福祉サービスを運営する上で最も重要で中心的役割を果たす職種なんです。

そこで今回は、グループホームで活躍するサービス管理責任者について徹底解説していきます。

  • サービス管理責任者とは
  • 障がい者のグループホームとは
  • グループホームにおけるサービス管理責任者の仕事内容
  • サービス管理責任者のとある1日
  • どうすればサービス管理責任者になれるの?

この記事を最後まで読めば、グループホームのサービス管理責任者の全てが分かります。

ぜひ、最後までご覧ください。

※この記事では障がいと共に生きる皆様に配慮するため、法律で定められている用語以外の“障害”という言葉を全て“障がい”と表記しています。

サービス管理責任者とは

サービス管理責任者とは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス事業所に配置することが義務付けられている職種です。通常は「サビ管」と省略されて呼ばれることが多いので、「サビ管」の方が言葉として聞き馴染みがあるのではないでしょうか。

サービス管理責任者は、その名の通り事業所が提供するサービスの全体を責任を持って管理するのが主な業務内容です。他のサービス事業所と掛け持ちで働くことはできませんが、一定の条件を満たせば事業所内の「管理者」や「支援員」等の別の役割を兼務することは可能です。

サービス管理責任者の資格要件が厳しく業務内容も複雑であることから、会社内でも中心的な役割を担っている職員が担当する場合が殆どです。

障がい者のグループホームとは

障害者グループホーム 千葉県 市川市

障がい者のグループホームとは、様々な障がいを持った方が地域の中で自分らしく過ごせるように設置されている施設です。主に一軒家などで共同生活をされています。

実は高齢者が利用する介護保険制度にも同じグループホームという名称の施設があり、一般の方が混同してしまう場合があります。

そこで具体的にサービス管理者責任者のことをご紹介する前に、活躍の場である障がい者のグループホームについてご紹介しておきましょう。

  • 障がい者向けグループホームの概要
  • 障がい者向けグループホームと高齢者向けグループホームの違い

障がい者向けグループホームの概要

障がい者向けのグループホームは、正式名称を「共同生活援助」と言います。

地域の中にあるアパートや一般住宅を改造した小規模の建物を住居とし、様々な障がいを持つ方が職員の支援を受けながら日常生活を営みます。対象となる方は身体障がい・知的障がい・精神障がい・難病患者で、「障害支援区分」の認定と「受給者証」の交付を受けている方になります。

グループホームは、運営方針に合わせて以下の4形態があります。

【介護サービス包括型】

入居者は日中、仕事に行ったり就労訓練や生活介護(デイサービス)を利用したりします。夜間や休日はグループホームの職員が支援を行います。

【日中サービス支援型】

重度の障がいをもつ人や高齢化して介護が必要になった人が対象となるタイプです。昼夜ともにグループホームの職員が支援を行います。介護が必要な入居者が多いため、他のタイプよりも人員配置が手厚くなっています。

【外部サービス利用型】

入居者が日中外出する点は介護サービス包括型と同様ですが、実際の介護サービスは委託を受けた外部のヘルパー事業所等が対応します。比較的軽度の方が多く入居しています。

【サテライト型住居】

最終的には1人暮らしをしたい人が入居するタイプで、実際にアパートを活用するなど1人暮らしに近い形態のグループホームです。基本的に1人暮らしになりますが、必要に応じて支援員から手伝ってもらったりアドバイスをもらったりして過ごします。入居期限が2年間と定められています。

このように、グループホームはアットホームな雰囲気の中で多種多様な障がいに合わせた支援が実施されています。大規模の障がい者施設のように規則に縛られることなく、あくまで本人の意思を尊重した地域に根ざした支援を提供している点が大きな特徴です。

障がい者向けグループホームと高齢者向けグループホームの違い

グループホームという施設には、障がい者向けの施設以外に高齢者向けの施設があります。どちらも同じグループホームという通称ですが、その提供内容には大きな違いがあります。

大まかな違いを下記の表にまとめました。

項目/事業所障がい者向けグループホーム高齢者向けグループホーム
元になっている法律障害者総合支援法介護保険法
正式名称共同生活援助認知症対応型共同生活介護
対象年齢原則18歳以上原則65歳以上
対象者身体・知的・精神の障がい及び難病によって障害支援区分の認定を受けている者要支援2~要介護5の認定を受けている者の中で、認知症の診断を受けている者
サービス管理責任者必要不要

このように、障がい者向けのグループホームは「障害者総合支援法」に定められている施設です。障害支援区分の認定を受けている人が対象で、入居可能な年齢は原則18~64歳の方です。一定の条件を満たせば15歳から入居可能になり、65歳になる前からすでに入居している人はそのまま住み続けることも可能です。

対する高齢者向けのグループホームは「介護保険法」に基づいた施設で、要支援2から要介護5で認知症の診断を受けている方が対象です。対象年齢は原則65歳以上ですが、厚生労働省が定める特定疾病(参照:厚生労働省HP)に該当して認知症になっている方の場合は40歳から入所することができます。

一言でグループホームと言っても、障がい者向けの施設と高齢者向けの施設では内容が全く違います。間違えないように注意しましょう。

グループホームにおけるサービス管理責任者の仕事内容

グループホームにおけるサービス管理責任者の仕事内容を大まかに説明すると、下記の4点になります。

  • グループホーム入居者のマネジメント
  • 職員への指導や助言
  • 家族や関係機関との連絡調整
  • その他(他職種との兼務について)

この章では、サービス管理責任者の仕事内容についてご紹介してきます。

グループホーム入居者のマネジメント

サービス管理責任者の1つめの仕事内容は、入居者の生活をマネジメントする役割です。

まずグループホームを利用するためには本人や家族の意向を聞き取り、「何を目標にして」「どのように」生活をするか計画を立てる必要があります。この入居者ごとに違う援助方針を「個別支援計画」という形で書類にまとめるのがサービス管理責任者です。

ただ計画書を作るだけでなく、目標を達成するために立てた計画が予定通り実行されているか・うまく達成できそうかについての確認・評価も行います。目標達成したと判断した場合は次の目標に対する支援を継続し、目標が達成できないと判断した場合は本人や関係者と話し合って個別支援計画を修正することを繰り返していきます。

サービス管理責任者は、入居者と共に生活プランである「個別支援計画」を立案・運用します。入居者自身が望む暮らしを送るため、生活全体をマネジメントするための重要な職種なのです。

職員への指導や助言

サービス管理責任者の2つめの仕事内容は、職員に対する指導や助言です。

入居者の生活を適切にマネジメントできるようにするため、実際に生活支援のサービスを実施する職員の見本となり先導する役割があるからです。

直接支援する職員の業務内容や支援手順について、しっかり個別支援計画に則って実施されているかを確認します。支援内容が適切でないと判断した場合は職員に対する指導を行います。悩んでいる職員がいれば話を聞いたり助言したりして、事業所全体を縁の下から支えて盛り上げる役割も担っています。

職員への指導や助言を通して個別支援計画の内容を事業所全体に浸透させて同じ目標を共有し、円滑なチームケアに勤めるのも大切な仕事のひとつです。

家族や関係機関との連絡調整

サービス管理責任者の3つめの仕事内容は、家族や関係機関との連絡調整です。

地域全体で入居者を支える環境を作るためには、入居者に関わる家族や地域の支援者(社会資源)・関係機関との関係を良好に保つことが重要だからです。

例えば、入居者が日中過ごしている就労訓練事業所や生活介護事業所(デイサービス)と情報を共有して支援内容の充実を図ったり、精神的に不安定になった入居者がいれば医療機関と連携を取って適切な服薬調整について相談したりすることがあります。

多くの場合、グループホームの利用者は日中は地域に出て過ごしています。生活の基盤であるグループホームでは、利用者が安心して日中活動に臨める環境を作る必要があります。そのためにも、家族や関係機関との連絡調整が必要不可欠なのです。

その他(多職種との兼務について)

サービス管理責任者は、他事業所との兼務は認められていません。しかし、充分にサービス管理責任者としての業務時間を確保できる場合は、同じグループホーム内において他の職種と兼務することができます。

そのため、直接身体介護等を行う支援員が不足している場合は他の職員と同様に直接支援業務や雑用を行う場合もあります。

サービス管理責任者のとある1日

ここまでは、サービス管理責任者の仕事内容について説明してきました。

この章では、サービス管理責任者が実際にどのように仕事をしているのかについてご紹介します。

以下の表は、とある介護サービス包括型グループホームに入居するAさんのタイムスケジュールです。Aさんの日常生活の中で、サービス管理責任者がどのように関わっているかに注目してください。

時間Aさんの行動サービス管理責任者の業務
6:00起床 
7:00朝食 
8:30外出準備出勤・宿直者から引継ぎを受ける。 外出準備が整わない入居者を手伝う。
9:00送迎車に乗り、就労継続支援A型事業所に出発。Aさんの家族に連絡し、生活状況を報告。個別支援計画書の見直しのため意向の聞き取りを実施する。
9:30就労継続支援A型事業所に到着。就労訓練開始。Aさんが通所する事業所に連絡。就労継続支援A型に所属しているサビ管からサービス利用時の状況を聞き取る。
10:30 機嫌が悪くデイサービスに行けなかったBさんの話を聞き、アドバイスをする。
11:00 家族や事業所から聞き取った情報をまとめ、現行の個別支援計画書の評価と新しい計画書の原案を作成する。
12:00お昼休み
13;00就労訓練再開法人本部に移動。事業経過の報告と戦略会議に参加する。
15:00 事業所に戻る。Bさんが風呂に入りたいと訴えるので、支援員と一緒に入浴介助する。
16:00 宿直のため出勤した職員に申し送りを行う。宿直職員からBさんの対応について相談があり、助言する。
16:30訓練を終え、帰宅。日中活動を終えて戻ってきた入居者の皆さんを迎え入れ、1日の労いの言葉をかける。
16:45サービス管理責任者が日中に作成した個別支援計画の原案について、支援員2名と共に話し合う。本人が合意したため、個別支援計画にサインをもらう。
17:30夕食の準備を手伝う。Aさんが担当する相談支援専門員へ、新しい個別支援計画に合意を得たことを説明しコピーを提出する。 入居者に挨拶し、退勤。
18:00夕食 
20:00入浴 
22:00就寝 

このように、サービス管理責任者は朝と夕方は入居者と情報収集も兼ねた交流・支援を行い、入居者が日中活動に出かけている間に事務作業や支援計画に関する業務を行っています。必要に応じて入居者の直接支援や職員への指導助言も行っており、正にグループホームの中心的存在であることが分かります。

どうすればサービス管理責任者になれるの?

サービス管理責任者になるためには、実務経験を積んだ後に所定の研修を修了する必要があります。主な流れは以下の通りです。

  • 保有資格に応じて3~8年の実務経験を積む
  • 相談支援従事者基礎研修(講義部分)を受講する
  • サービス管理責任者基礎研修を受講する
  • サービス管理責任者実践者研修を受講する

それぞれの要件についてご紹介していきます。

①保有資格に応じて3~8年の実務経験を積む

サービス管理責任者になるための研修を受講するためには、所定の実務経験を証明することが必要です。保有する資格によって一番短い場合で3年、無資格で業務についている場合は8年の実務経験が必要です。詳しくは下の表にまとめましたのでご覧ください。

業務内容国家資格保有者 ※1その他有資格者 ※2無資格者
相談支援業務3年以上5年以上
直接支援業務3年以上5年以上8年以上

※1 医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、管理栄養士、栄養士、精神保健福祉士の資格に基づき(資格取得後に)、当該資格に係る業務に従事した期間

※2 直接支援業務に従事し、次のいずれかに該当する者(資格取得前も年数に含む)

  1.  社会福祉主事任用資格を有する者(社会福祉士、精神保健福祉士、研修・講習受講者等)
  2.  訪問介護員(ホームヘルパー)2級(現:介護職員初任者研修)以上に相当する研修を修了した者
  3. 保育士及び児童指導員任用資格者
  4. 精神障害者社会復帰指導員任用資格者

参考:東京都心身障害者福祉センター サービス管理責任者研修・児童発達支援管理責任者研修研修制度変更に関するまとめ

②相談支援従事者基礎研修(講義部分)を受講する

まずは、年1回実施されている「相談支援従事者基礎研修」のうち講義部分を受講します。都道府県によっては「相談支援従事者基礎研修 サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者向け」等の名称になっている場合があります(詳細は各都道府県により異なる)。

詳細は、各都道府県のホームページを検索してみましょう。

③サービス管理責任者研修基礎研修を受講する

次に、サービス管理責任者研修基礎研修を受講します。こちらも年1回程度しか実施していない都道府県が大半です。上記と同様に募集は都道府県が実施しています。

④サービス管理責任者実践者研修を受講する

最後に、サービス管理責任者実践者研修を受講します。この研修は③のサービス管理責任者基礎研修を受講してから2年間サービス管理責任者としてのOJTを受けてから受講する必要があります。この研修を終えると、晴れてサービス管理責任者として仕事に就くことができます。

なお、サービス管理責任者の資格は5年ごとに更新する必要があります。更新研修にも受講要件があり、サービス管理責任者等としての実務経験がないと受講できない仕組みになっています。資格取得後に介護保険分野に転職した場合は将来的にサービス管理責任者の資格を失効する可能性があることに留意しましょう。

このように、サービス管理責任者になるためには3~8年の経験年数と3種類の研修を順次受講する必要があります。研修制度が複雑で、計画的に受講を進める必要があります。

開催される回数や人数に制限があるので、チャンスを逃すと大変です。キャリアアップに影響しないよう、実務経験の年数達成に合わせてこまめにサイトをチェックしましょう。情報を取り逃さないようにすることが重要です。

まとめ

ここまで、障がい者グループホームにおけるサービス管理責任者についてご紹介してきました。要点は下記の通りです。

  • サービス管理責任者とは、障害福祉サービスの中心的存在であり「サビ管」と呼ばれている
  • グループホーム(共同生活援助)とは、身体・知的・精神障がいや難病患者が地域で自立した生活を送るために生活する施設である
  • グループホームにおけるサービス管理責任者の仕事内容は、主に「入居者のマネジメント」「職員への指導や助言」「家族や関係機関との連絡調整」である
  • サービス管理責任者は、朝夕は現場を手伝いながら入居者が日中活動をしている間にサビ管業務を行っている場合が多い
  • サービス管理責任者になるためには、保有資格に応じた3~8年の実務経験と3種類の研修受講が必要

これらの情報が、少しでも皆様のお役に立てば幸いです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。


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